インドネシア高利回り商品が熱い!
実録・投資セミナー 海外銀行口座開設編

ジャイコミ編集部

投資セミナーに行けば、販売会社がどんな投資商品を売りたがっているのか、どのような口説き文句を使っているのかがわかる――。

銀行の預金金利がほぼゼロに近い日本において、高い利回りの商品は実に魅力的だ。だからこそ、高利回りという謳い文句に、目を曇らせてしまう人も出てくる。

海外不動産投資編に続いて海外投資がテーマで申し訳ないが、今回は海外銀行預金口座開設セミナーを題材とする。グレーな金融商品に詳しい筋の話によると、これは現在注目のトピックらしい。

大多数の人は自分に関係ない話だと思うかもしれない。だが、ジャイコミとしては注意喚起のため取り上げることにした。

定期預金金利は日本の30倍!?

そのセミナーは東京・五反田で開かれていた。

五反田はオフィス街だけでなく歓楽街としての顔も併せ持つ。その猥雑感も手伝ってか、五反田にあるサイゼ○ヤはネットワークビジネスやマルチ商法の勧誘の場によく用いられるらしい。
セミナー会場も怪しげな雑居ビルの一室だった。

講師は20代後半くらいにみえる若い男性だ。次のようなセリフからセミナーは始まった。

(写真はイメージです)

知ってます?(写真はイメージです)

日本の銀行の預金金利、どれくらいか知ってます?

10年の定期預金で年0.1%、普通預金だと年0.02%程度。「72の法則」って聞いたことありますか。「72÷金利(%)」で出た数字が、「元本をその金利(複利の年利)で運用すると倍になる年数になるという計算式です。つまり、年利が分かれば資産が倍になるまでの年数が出せるわけです。

普通預金だと72÷0.02で3600年、年利0.2%だとしても360年もかかります。これは徳川将軍の江戸時代から運用してやっと倍になるという数字です。日本はこんなに低金利なので、海外の事業や金融商品への投資となるわけです。

この手の海外投資セミナーは、日本の財政不安と年金不安を煽ることから始まるのがほぼ定番。今回はいきなり本題に切り込んできた。
「この若い講師、なかなかやる」と余裕を感じていたのだが、次の言葉で少し混乱してしまった。

今回紹介するG○○○(以下、G社)はリゾート、林業、保険業、金融業など多角的経営を行っている企業です。

あれれ~?「インドネシア銀行口座開設セミナー」に来たはずだけど、事業投資の話だったっけ?(江戸川コナン風)
思わず尋ねたくなったが、「保険」「金融」という単語が出てきたので、黙って続きを聞くことにする。

ジャイコミ有料記事テキスト画像

この間、男性講師はホワイトボードにマジックで「G社」と「マンディリ銀行」と書き、両者を線でつないだ。そして話はマンディリ銀行の概要へと移った。

マンディリ銀行はインドネシアの国営銀行トップで支店は1300あります。
預金金利(年率)は普通預金だと2.4%、定期預金だと7.5%。普通預金なら100万円で2.4万円。定期なら7.5万円の利息がつく計算です。

ただ、インドネシアの所得税は20%かかります。定期預金だと1.5万円が税として引かれて手元に入るのは6万円に。それでも日本の預金金利なら1000円、2000円の世界なので30倍です。これが「インドネシアが熱い」といわれる理由です。

熱いんです!

熱いんです!

 

へぇ~インドネシアは熱かったのか(棒)

マンディリ銀行がインドネシア最大の国営銀行であることは事実だ。
ただ、それ以外の点についてはきちんと確認できていないのであしからず。

アクサ・マンディリとプルデンシャル・マンディリ

インドネシアの経済情勢などの説明を終えたところで、「今までの話で質問は?」と振られた。そこで口座維持手数料などは必要なのかと聞いてみた。
そうすると・・・

マンディリは口座維持手数料はとっていない。ただ、G社が管理してくれているので、その料金としてG社に年間1万800円を払うことになります。
口座開設の際はG社がサポートしてくれるので、その料金として3万2400円も必要。3泊5日で口座開設ツアーも行っています。

ん? G社って一体????
引っかかるものがあるが、質問タイムはいったん終了。説明が再開された。
このセミナーの全貌がみえてきたのはここからだった。

G社ではアクサ・マンディリとプルデンシャル・マンディリという保険商品も扱っています。

利回りはルピア(現地通貨)で、アクサの方が固定の年17%。プルデンシャルは変動の年15~20%。プルデンシャルは直近過去5年の実績値です。
おおよそ50万から100万円で購入できて10年満期。3000万円の死亡保障が付いています。途中解約もできます。

利回りが良すぎると思われるかもしれません。
でも、マンディリ銀行は保有している国営企業の株で運用をしているんですね。空港とか道路とかインフラ関連企業の株です。これで40~44%の運用益を出している。
これにアクサとプルデンシャルの運用益が加わって、先ほどのような利回りになるんです。

いわずと知れたことだが、アクサはフランスの生命保険大手、プルデンシャルは米国の生命保険大手だ。日本でも営業している。また、マンディリ銀行のHPではグループ内にアクサ・マンディリ・フィナンシャルサービスという合弁会社の存在も確認できる。

講師の説明では、アクサやプルデンシャルの運用益にマンディリ銀行の高い運用益が上乗せされるため、年17%や年20%といった利回りの保険商品になるのだという。

なお、加入者に対する保険の配当金は毎年分配されるわけではなく、10年後など満期時にまとめて入るとのこと。

ナゾのG社とその女性会長

今回のセミナーは「銀行口座開設セミナー」と題している。しかし、この保険商品の紹介の方がセミナーの本題なのだろうか。

説明が一通り終わったので、気になるG社について聞いてみた。

G社は設立から7年目の資本金330億円の企業です。
G社の会長は日本人です

(※資本金330億円という数字はよくよく考えると巨額なので、聞き間違いかもしれない)

えっ!!G社ってインドネシアの企業じゃなかったの?

このやりとりをするまで、G社は現地企業でマンディリ銀行を傘下におく持ち株会社みたいなものだと完全に誤解していた。なぜならホワイトボードには「G社 → マンディリ銀行」と示されていたからだ。
慌てて「G社とマンディリは資本関係などないのか」と聞く。

マンディリには会長が200億円預けています。マンディリから融資も受けている。
会長については私から詳しく話せませんが、女性で、元々は美容化粧品関係の事業をやっていた人です。

会長がお金を預けて融資を受けているって・・・。それは資本提携でも業務提携でもないがとすかさず突っ込む。

共同で事業を行っていると考えてください(ちょっと焦っている風)。

日本だと銀行のキャッシュカードの券面に企業名が入ることはまずないと思いますが、マンディリ銀行のデビットカードの券面にはG社のロゴが入っています。(その写真をタブレットで見せられる)
G社はリゾートもやっています。金融、保険を立ち上げてから2年。これらの部門は日本人がやっています。あと5年もすれば上場も。

「上場」まで口にすると、正直、怪しい匂いがプンプンしてくる。セミナーはここで終了した。

検索するとこんなサイトが・・・

検索するとこんなサイトが・・・

 

後日、最初に記したグレーな金融商品に詳しい筋と話す機会を得たので、問題点を指摘してもらった。

それは次の3点だ。

①満期が10年なので仮に問題が顕在化するとしてもずっと後になる
②そのときは海外の商品なので自分で交渉もできない(そういう人が多いであろう)
③結局、G社や、今回のセミナー講師のようなG社を紹介した人などを相手に交渉することになるが、それらが10年後に存続しているかは不透明

また、この手の勧誘員(代理店)は下位の勧誘員(2次や3次の代理店)が顧客を得ると上位の勧誘員(1次代理店)にも報酬が入るという形で組織化されている。当然、彼らの懐に入る報酬はいろいろな形で契約者が払っている。

最近はインドネシアに限らず「銀行もの」の商品が多いらしい。試しに「フィリピン 銀行 イースタンリザール」でネット検索してほしい。上の画像のようなブログなどがいろいろ出てくる。

くれぐれも怪しい面々の「養分」にならないように。

ジャイコミ有料記事テキスト画像

はじめての方はこちらの記事もどうぞ!

損する前にこれを読め!『野村証券の悪を許さない』はこちら

あなたの外国株投資は店頭取引?委託取引?ある男性の憤怒はこちら

実録・投資セミナー① 「イケメン風講師が口走る”元本保証性”」クラウドファンディング編はこちら

実録・投資セミナー② 「いまはフィリピン、フィリピン!!」海外不動産編はこちら

実録・投資セミナー④ 昨年は500%超のリターン!ドヤッ」仮想通貨編はこちら

関連記事

今井澈のシネマノミクス

映画「ジョーカー」と(恐らく)2020年のトランプ→ペンスの政変と株(第985回)

ウォール街の友人から、この映画を私がまだ観ていないと言ったら早く観て感想を聞かせて欲しいと言われた

記事を読む

映画「JFK」とトランプ暗殺未遂と今後の米国の対外政策(とくに円の対ドルレート)。長期上昇相場を支えるわが国の新NISAにも注目

2024・7・21(第1230回) <huluより> オリバー・ストーン監督・

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

シェイクスピア「リチャード三世」とバイデン大統領を織り込み始めたNY、そして日本株長期上昇のサイン(第1020回)

 15世紀後期のイングランド。ランカスター家とヨーク家の王位をめぐる戦い「ばら戦争」の末、ヨーク家

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「ダイ・ハード ラスト・デイ」とウクライナ問題とドル高。そして私の強気(第1103回)

「ダイ・ハード」シリーズの第5作。舞台はロシア。初めはモスクワ。次いでチェルノブイリ(ウクライナ)

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「ジャイアンツ」と原油価格の予想。それに、日銀新総裁による金融緩和はいつまで続くか2023・2・19 (第1160回)

1956年の作品。主演はロック・ハドソン、エリザベス・テイラー、それにジェームス・ディーン。監督の

記事を読む

PAGE TOP ↑