【初・中級者向き】映画「サイコ」とまさトラ・リスクと円・株の今後と戦略
公開日:
:
マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
2016年・11・6
アルフレッド・ヒッチコックのご存じの名作。先日衛星放送で「ベイツ・モーテル」というシリーズがあった位、もうホラー映画の「大古典」となったのだろう。
お話は有名なので簡単に。OLのマリオン(ジャネット・リー)は大金を横領し車で逃げる。大雨で道に迷いモーテルに泊まったが、シャワーを浴びている最中に突然、得体のしれない何者かにナイフで襲われ殺される。観客にとり大ショック。その後も息苦しくなるほどの恐怖が忘れられない。
最後に精神科医が言う。モーテルの持ち主ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンスが名演)の体の中に、彼自身と年老いた母親が同居していた――と。マリオンの殺人は息子が惹かれたので母親が嫉妬して犯行は行われた。
映画のラストシーン。母親がノーマンを完全に支配し、声まで老婆に変わり、若いノーマンの顔がミイラになっていた母親の顔に変わってゆく。いま思い出しても、コワーい。
Eメールゲート再燃でリスクオフ
先週、私はFBIがヒラリーのEメールゲートを蒸し返し、展開次第でトランプ・ショックの可能性も、と指摘し、当面慎重な投資方針を主張した。私の予想通りではないか。きっかけはABCTVの世論調査で、トランプが1%ヒラリーを上回ったと報じられたこと。
以前から心配されていた「まさか」が現実になる?「サイコ」で第一のマリオン殺害が次に何が起きる?と観客を恐怖に陥れたように。リスクオンからリスクオフに、投資方針が一斉に転換した。私はまだヒラリーと考えているが。
誰もが考えるのは、大手証券会社や著名エコノミストが「トランプになったら大変」という予測。
日本に関する部分、つまり為替レート。共和党がトランプ勝利とともに上、下両院で多数を維持した場合は米国金利は上昇(「低金利はオバマの失策!」)。保護主義など、本来はドル高だが、現実にはドル安(円高)が強行されるとの不安が高まる。
トランプ勝利で世界株安
ある為替の専門家は「クリントン勝利103~106円、トランプ勝利102~108円」のイメージを予測。現にここ1カ月のFBIの調査開始前は円高リスクを先物取引などでヘッジしていた投機筋が巻き戻しを始めていた。ドル円のベーシススワップ(米ドルプレミアム)も急速に縮小。しかし支持率一部逆転の報が出てからまたリスクオフに戻りかけている。週末には102円に。BREXITのときの「専門家」の予想を思い出させる。
日本株はどうか。トランプ登場なら、世界的株安つまりリスクオフが発生するだろう。新興国通貨は一斉に売り圧力が増大、とくにメキシコ・ペソは大打撃が起きよう。
日本株は11月2,4の2日で日経平均530円安、日銀が毎日ETFの700億円以上の買いを入れても、リスクオフの流れを止められなかった。
1万6600円近辺で済むかどうか
テクニカル・アナリストは、下値のメドを一目均衡表の転換線1万7059円、21日移動平均1万6903円までの調整が(はっきり言って甘いと思うし、もう大台は割れた)上昇トレンドが変わらない小幅調整。200日線の1万6600円近辺でサポートと見ている。トランプが現実に当選したら、そんな下げ幅で済むかどうか。逆に言うと、そこらで止れば年末から大相場だが、そううまくいくか、どうか。
というのは米国経済の先行き不安。ローレンス・サマーズ氏が言うように「トランプ大統領ならもう8年続いた好況は終わり、遅くも18か月後に大不況に突入」とすると米国株は相当下がる。2000~3000ドルは下がるだろう、と伊東秀広さんは言っている。
欧州はBREXITの影響でダメ、中国はまあマトモな投資家なら本気でやる人はいない。何せBRICSが(ブラッディ・リディキュラス・インベストメント・コンセプツ)とからかわれているご時世だ。残るは、日本しかない!
長期強気、クリントンでも目先慎重
グラフをのせられないのは残念だが、世界で対外貸し出しを伸ばしているのは日本だけ。十分な資本蓄積、高い技術と開発力、強い製造業をキープしながら海外売上高比率50%という日本の強味が再確認されること確実だ。
私は先々週以来、長期強気だが目先は慎重に、と繰り返し主張してきた。ここ何日かの円高株安で、一部で云われていた目先目標1万8000円、107~8円は見事にフッ飛んだ。だから言わないことじゃない。
イマイ先生、何かハラに一物あって目先弱気を言ってるの、と問い合わせがあった。「弱気」でなく「慎重」です。お間違いないように。
ご質問した方は、恐らく「サイコ」で殺されてしまう探偵(マーチン・バルサム)のセリフのような方かも(失礼)。
「探偵というのは、正直者と言われている人物ほど疑ってかかる商売です。」
私は世界中にあるブラックスワンを忘れていないだけです。クリントン当選なら、円安株高に戻る、とお考えの方は、とんでもない間違い、と申し上げる。ドナルド・トランプが「不正選挙」を言い立てて、当分大混乱が続くシナリオの公算大なことをお忘れなく。またリスクオンに回復するには時間がかかる。前から言っていた「大魔王」はNY株とワシントンにいた。いま、やって来ているとみる方が自然だ。
映画「サイコ」とまさトラ・リスクと円・株の今後と戦略(第851回)
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
関連記事
-
木村喜由のマーケットインサイト
債券市場の変調、緩和マネーが逆流か
流行りの「低分散投資」の愚日本個人投資家協会 理事 木村 喜由 <2015年5月号> 昨年12月以来のマーケットは、原
-
映画「インサイダーズ/内部者たち」とHFの作戦変更
私は嫌韓も嫌韓、大嫌韓。前任大統領李明博が天皇陛下に謝罪に来いというバカ発言して以来
-
2015年を読む⑦
2014年に儲かったのは債券、今年は株
JAIIセミナーレポートジャイコミ編集部 前回の長谷川慶太郎理事長「逆オイルショックの真の狙いはロシア服従」に続いて、1月
-
損する前にこれを読め!
実録 投資セミナーに行ってみた!!
~クラウドファンディング編②~
“銀行に近い感覚”で預けてはいけないジャイコミ編集部 投資セミナーに行けば、販売会社がどんな投資商品を売りたがっているのか、どのような
-
ソーントン・ワイルダー「サン・ルイ・レイの橋」とラニーニャ現象と私の「それでもトランプ」説(第1034回)
小品でも忘れられない作品がある。劇「我が町」で有名なソーントン・ワイルダーのこの小説は、当時中学