【初・中級者向き】映画「ミッション・インポッシブル フォールアウト」と迫ってきた中国貿易敗戦

2018・8・19

トム・クルーズのM・Iシリーズ第6作で私は一番よくできていると思う。おすすめだ。世界中でこのシリーズは28億ドルの興行収入を上げたというが、さもありなん。副題の「フォールアウト」は「副次的な予期しない影響」という意味と「放射性降下物」とあるそうだが、これも巧い。

56歳のトム・クルーズの全力疾走は第1作(1996年)以来ずっとで、見せ場になっている。カーチェイス(バイクも)に加えて飛行機のボディーにしがみついたり、今回は何とヘリコプターに縄一つでぶら下がったり。そのヘリをジャックして敵のヘリに体当たりしたり-。ともかく一作一作趣向を凝らして観客をドキドキさせる。私はトム・クルーズにはアカデミー賞をやるべきと思うが、まあムリだろうなあ。

ヘッジファンドが売りから買いへ

今月13日の日経平均は440円の大幅安。トルコ・ショックと呼ばれ、ヘッジファンドの日経平均先物売りが推定4500枚もあった。

ところが翌日は498円の急上昇。トルコの騒ぎが少なくとも目先は大騒ぎするほどでないと考えたか。それとも9月末決算が多いヘッジファンド業界が「45日ルール」で8月15日に売ったのを最後に買い姿勢に入ったのか。まあ後者だと私は考える。

 

少々あきれているのが、マザーズ、ジャズダックの人気株だ。業績がちょっとでも悪いニュースが流れたらもうメチャメチャで、私はいい買い場と思うが手が出ていない。14日の498円高でも新安値銘柄は291、新高値はわずか44銘柄だった。これじゃあ、ねえ。

 

私は、現在の投資家の心理を不安にさせているのが米中貿易摩擦の形をとった両国の覇権争いと考える。もちろんハイテクの覇権は長期化しようが、関税の引き上げ戦争は中国側の敗戦で終わるのが目に見えている。

 

中国の対米輸出は年5050億ドル。つまりトランプ政権は関税をその分上げること出来る。しかし中国の対米輸入は1300億ドル。もう500億ドル引き上げたから、残りは800億ドル。トランプ政権が2000億ドル分の関税を引き上げても、もう手持ちカードは、ない。

中国国内の資金が流出

これに加えて習近平政権には大きな負担がある。江沢民、朱鎔基、胡錦涛などの長老たちが、個人崇拝を含めて北載河会議で対米交渉の失敗の責任を追求したことである。

 

一時は習ご本人まで責任が及びそうだったが、最近の人民日報を見る限り何とか逃げ切ったらしい。代わりに①序列第5位の王コ寧が失脚②貿易担当の劉鶴副首相が外された。8月22日から次官級がワシントンに飛んで、王岐山副主席訪米または両首脳の直接会談の地ならしを始めた。ここで欧米諸国から警戒される一因となった「中国製造2025」の修正があるのだろう。また人民元のドルぺッグ制から完全フロートへの移行、それに輸出依存から内需振興なども検討されるかもしれない。

 

私が注目しているのは上海株式市場の株価がここ数年来の安値圏に突入していること。人民元レートの安値と考え合わせると、厳しい外貨管理にもかかわらず、中国国内の資金が逃げ出しているに違いない。

転機は9月中旬

ただ警戒期間はここ3週間程度。9月中旬が転機、と考えているヘッジファンの運用担当者結構多い。

第一には9月12日に米国中間選挙の予備選挙が終わり、貿易問題よりキャピタルゲイン課税にトランプ大統領も選挙民も関心が向かうこと。

第二にはヘッジファンドの一部が懸念している「ヒンデンブルグ・オーメン」の危険期間ひと月が完了すること。8月10日にこのテクニカルな急落予兆が出た。1か月間に5~10%下落が経験的に発生。77%の確率といわれているので、売りを前提とした作戦をとっているところも。ただ、2000年以降は50%と低いのだが。これも9月中旬には厄払いになる。

 

第三は日本株が米中貿易戦争で、本来中国株が売られる身代わりとなっていたが、この騒ぎが一段落すれば貿易戦争受難銘柄が浮上する。こうしたリストはサービスするところがある。

 

銘柄としては①安川電機(6506)②コマツ(6301)③日本軽金属(5703)④日立建機(6305)⑤スバル(7270)⑥三菱電機(6503)⑦アマダ(6113)といったあたり。

 

映画のセリフから。第三作のM・I・Ⅲで結婚していたジュリア(ミシェル・モナハン)が危険があるので別居して隠れ住んでいるうちに別の男性と結婚、愕然としているイーサン(トム・クルーズ)に言う。「私はあなたを愛しているけど、今の旦那で十分幸せなのよ」もっとも画面ではイーサンに首ったけなレベッカ(イルサ・ファウスト)に立場を譲った形だ。やはり色男は強いんだなあ。

要するにこのコラムで私がいいたいのは、何か市場の下落があれば、それは別の市場で上昇につながっている、という市場のルールだ。見逃さないようにしたい。

 

なおヒンデンブルグ・オーメンについて説明を。

 

  • NYSEで52週高値更新銘柄数と52週安値更新銘柄数がともにその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2・8%以上。
  • NYSE総合指数が50日前を上回っている。
  • 短期の騰勢を示すマクラレンオシレーターという指数(複雑なので説明略)がマイナス。
  • 52週高値更新銘柄数が52週安値更新銘柄数の2倍を超えない。

映画「ミッション・インポッシブル フォールアウト」と迫ってきた中国貿易敗戦(第921回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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