フオーリン・アフェアーズの「台湾侵攻は近い」に反論する。日本株高へのひとつの材料として(第1090回)
あまりにも著名で世界的に影響力の大きい一流誌の論文にケチをつけるなんてーーと思われる向きもあろう。たしかに我自身が恐れ多いなと感じている。
しかし、最近電話した旧知の米国のマネージャーが、日本株への投資比率を標準より低くしている一因と聞いたので反論する気になった。
順序として七月号の論文を紹介しよう。
題は「中国の台湾侵攻は近いー現実味を帯びて来た武力行使リスク」
内容をまとめると次の通り。
- この数ヶ月、中国が台湾の武力統一を考えていることを示す不穏な動きがある。中国は台湾侵攻での軍事演習を強化、2020年に防空識別圏を380回も侵犯した。
- 習近平は台湾問題を解決する野心を明らかにし、中国指導者の多くは「ワシントンには台湾を攻略するのを止める力もないし、中国に対し効果的な連合をまとめる力もない」とみている。
- 政府系新聞の環球時報の調査によると「市民の70%が台湾の武力統合を強く支持」「3~5年の間に戦争と見ている中国国民は37%」としている。
その結果、中国の作戦は①ミサイルと空爆による台湾攻撃②海上封鎖とサイバー封鎖③近隣諸国への米軍に対する攻撃、の3つが遂行されるだろうーとしている。これは軍事関係者の、コンセンサスとしていい。
同論文は、ある専門家の意見として「2030年から35年」という台湾進攻時期を紹介している。後述する中国人民解放軍の計画による2020年~25年より遅いがこの方が現実的かも知れない。
実は私は、ある日本の防衛軍事専門家と米国のあるシンクタンクの中国問題専門家達と連絡を取り合った。そして次の結論に達した。
- 2021年3月に2人の海軍大将が上院軍事委員会で「あと6年で台湾進攻の脅威が現実化する」と述べた。日米のマスコミはこれに追随して動いている。
- その後2021年6月、米軍トップの総合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将が「中国が台湾合体を掌握するだけの能力をもっていない。」「現時点では武力統一の意図や能力はほとんどない」とした。
ある専門家は「習近平が台湾進攻をいうのは2つの理由による。
第一は中国の小中学校の教科書に「国恥地図」がのっており、アヘン戦争以降失った国土が掲載されている。子供の幼い脳の中に組み込まれている。従って台湾を取り返すのが中国国民の悲願である。
第二は中国の人民解放軍のスケジュールに乗っていること。(未確認だが)2025~2030年に台湾の本土との統合が予定されている。
そこで中国側はどうしも台湾進攻をやめるとは言えない。
前記した中国専門家の一部は「2024年」としている。理由は次の通り。
「習近平国家主席が任期を撤廃したのは、2年10年では時間が足りないと判断したからだろう。3期目が終わる2028年に退任する可能性が高い。ということは、それまでに、やる!
「2024の米国大統領選と台湾総統選が重なるので、これがひとつのチャンス」
なるほど。たしかにひとつの見解ではある。
最後は、ある日本人の軍事専門家のご意見を結論として紹介しよう。
- 2021年3月の海軍大将2人の上院での発言は、予算獲得のためのビジネストークである。だから陸軍の上司が、お立場もあるが、冷静な発言をした。
- 一番可能性があるのはたしかに2024年だが、それ迄の米国バイデン政権の国内外での立場が、中国側の台湾への政策を決定する。
- 2022年の中間選挙が、とくに大切。
- ここで共和党への政権交代(トランプ復活も含む)をしめすほど共和党が勝てば、2024年の台湾進攻はありうる。
以上です。
台湾問題の結果がどうなるか、今の所誰にもわからない。この反論に対し肯定的なフアンドマネジャーが複数いることは事実である。
次回は米労働省の新規制がどんな影響を、日本株に対して与えるのかを述べる。ご期待ください。
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