映画「TAR/ター」と米国債務の引き起こす巨大なリスク。

映画「TAR/ター」と米国債務の引き起こす巨大なリスク。インフレ対抗策としての金への投資。そして日本株の保合上っぱなれ。2023・5・7 (第1171回)

女性のベルリンフィルの指揮者ターの栄枯盛衰を描いた佳作。アカデミー賞レースで6部門の候補になった。

没落しかけたター(ケイト・ブランシェット)が、後任の指揮者を殴り倒すシーンが、最も印象に残る。それでも、歴史を覆すことはできなかった。誰でも不可能に違いない。

米国の世界の覇権は変わらないが、やはりピーク時に比べると、後退しているのは否めない。後に示すがチャートの示す通り、米国国債の保証料(CDS)のレートは、12年前の米国国債の格下げ時期より現在は高い。チャートは5年物だが、1年物は1%台で12年前を上回っている。原因はバイデン政権と民主党に対し、下院で過半数の議席を握った共和党との対立からである。

ここで連邦債務上限問題をさかのぼって説明しよう。

米国は連邦政権の債務の上限を法律で定めている。トランプ政権時代の31兆4000億ドルが上限である。

これが去る1月19日に上限に達した。米国財務省は、それ以降公務員の年金への投資を一時停止するなどして、資金繰りをつけている。

ところが、4月19日、下院共和党のマッカーシー議長に5人の下院議員は、債務上限の最大32兆9000億ドルに引き上げるか、または2024年3月末まで債務上限を凍結する。

その見返りに、連邦政権を4兆5000億ドル削減する独自の法案を作り、下院で採決した。

しかし、バイデン政権はとてもこの案を飲めない。目玉政策であるクリーンエネルギー生産設備に対する税務控除は廃止、学生ローン支払い停止が含まれているからだ。

ここへきてにわかに警戒感が高まったのは、ゴールドマンサックスが「4月歳入が予想より少なかったので、債務不履行の可能性が6月になる可能性がある。」と見通しを示した事になる。

政治ショーであり、現実にはおきないというのが大方の見方である。しかし下院共和党目標が一枚岩ではなく、フリーダム・コーカスに呼ばれる保守強硬派の動きで見通しをわからなくしている。

2021年当時は合意こそ成立したものの、格付け会社S&Pが国債のワンノッチ格付け引き下げで、株式は240ドルの暴落、金はオンス240ドル急騰した。

今回はどうだろうか。マネーサプライが足りない。

チャートが示す通り、米国のM2は史上初めてマイナスになった。(Bdフルーレットによる)

では金融を緩和する必要は?不可能だ。

インフレ率はいぜん3〜4%と高い。FRBはいぜんとして政策金利を引き上げる必要がある。

一方、中堅銀行は次から次へと預金の引き出しで経営破綻している。救済には金利上昇は大敵。この矛盾がどこかで何かのワルサを生むことは、相当な確率で予想できる。これが前記したCDS(保資料)の上昇を描いている。私がどこかでドカがあると予想する理由だ。

この矛盾は確実にインフレを呼ぶ。

当然、インフレに強い金と株式への投資が次第に人気化して行くことになる。まず金。

何しろ12年前は株の急落と併行して価格はオンス240ドルの急上昇。

金はコロナ禍にも強かった。2020年8月に2067.15ドル(ザラ場では高値は2089.20ドル)をつけた。

昔から金価格に恐怖計測器(FEDR)の異名を持つ。年後半には利下げ(FRB)という追い風になる。利子のつかない金には、高金利には大敵。

インフレが最も激しかった1970代で、いわゆるニクソン・ショックをきっかけに、金は10年間で18倍に急騰した。

インフレの素地は十分にある。リーマン・ショック以来、FRB中心に世界の中央銀行は大規模な金融緩和策を続けてきた。

前記した矛盾からここで引き締めを中断すると、停留したマネーが、インフレとして顕在化するリスクがある。(前記したマネーサプライ減少はごく一時的なもの、と見るのが妥当だ。)

ところで日本株。連休中に先物の価格が千円近く下落した。休み明けはやはり安いに違いない。ここは買い場。

なぜか、相次いだ中堅銀行の破綻が相次いで救済され、薄紙がはがれるように悪材料が軽くなっている。保合いのうわっぱなれは近い。

いい材料が出てきた。ロシアの民間軍事会社ワグネルが激戦地パムフトからの撤退を発表、停戦へのみとうしを明るくした。


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