映画「最高の人生の見つけ方」とトランプ大統領による「アメリカの世紀」の終わり

2025・8・10(第1286回)

アマゾンより>

2007年の映画だが、味わいの深い佳作。主演の2人、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン、とても巧い。当時のキャッチコピーは“We live, we die. Wheels on the bus go round, and round.”人は生き、人は死ぬ ― 世の中はその繰り返し。満90才が近い私としては、ジワリと感銘が深い作品だ。

2人はガンで死期が1年以内だ。相部屋で一緒になったが、1人は自動車整備工、1人はビリオネアでこの病院をもっている。オーナーだから最高級の病室に入っていいのだが、すべて2人部屋というルールを作ってしまっている。

時間つぶしに整備工が、余命のあるうちにやりたいことをリストに作る。ビリオネアは「費用は全部自分が持つから、やろう」という。

2人で作ったリストには、「死ぬほど笑う」、「スカイダイビングをする」、「世界一の美女にキスをする」などが含まれている。カーターは同意し、妻のバージニアが反対する中、2人は秘書と共に人生最後の休暇で世界を旅し始める。スカイダイビングをし、ビンテージのシェルビー・マスタングとダッジ・チャレンジャーでカリフォルニア・スピードウェイを走る。そして、エドワードのプライベート・ジェットで北極上空を飛び、シェーブル・ドール(注:南仏のエズにある超高級ホテル)で夕食をとり、タージ・マハルを訪れ、万里の長城の上でバイクを乗り回し、タンザニアでライオン・サファリに参加し、エベレスト山を訪れる(但し、天候により登頂は出来ない)。(ウィキペディアより)

まあ終りは省略するが、年輩の方々には十分おすすめできる。

ある意味でアメリカの意志を代表する雑誌「フォーリン・アフェアーズ」が、ここ何カ月間の米国の与論の変化を伝えている。

第7号は「『アメリカの世紀』の終わり――ドナルド・トランプとアメリカパワーの終焉」と題して論文を書いた。

内容のごくごく一部をご紹介すると――

「2024年5月のギャラップ社の調査によると、81カ国でアメリカが、52カ国で中国が優位に立っている。しかし、トランプがアメリカのソフトパワーにダメージを与えつづければ、今後、この数字は大きく変化していくかも知れない。」

著者の1人が、クリントン政権の国防次官補をつとめたナイ・ハーバード大教授であることを考え合わせると、この発言の意味がわかるだろう。

これがNo.8号になると――

「もう誰も相手にしない――ポスト・アメリカ 世界のアメリカ」となる。

著者はコリ・シェイクというアメリカン・エンタープライズ研究所のディレクター。

一部を紹介しよう。

「【果てしなき単独行動主義】

ドナルド・トランプ大統領の政治的台頭とその政治的アピールは、「現在のアメリカを失敗の結果として描くこと」で支えられている。「疲弊し、弱体化し、破壊されている」と、この国を描写することで、彼は支持を広げている。しかし矛盾した言動には特徴的な問題がある。それは、彼の外交政策が、アメリカパワーをひどく過大評価していることだ。トランプと彼のアドバイザーたちは、アメリカが危うい状況にあると主張する一方で、ワシントンの一方的な行動で、他国を屈服させ、求める条件に従わせることができると信じているようだ。

しかし、戦後のアメリカパワーは「強制ではなく協力」に根ざしていた。トランプ・チームはその歴史を無視し、協調的アプローチがもたらしてきた恩恵をすべて当然視する一方で、各国が米主導の国際秩序から離れ、アメリカの利益と敵対するような新たな国際秩序を構築する未来をイメージできずにいる。だが、トランプ政権はまさにそうした帰結を招き入れつつある。」

これ以上、私としてはつけ加えるセリフはない。

ただ、ごく最近トランプが対ロ融和を放棄、米ロ対立へ向かっていることを指摘したい。

8月7日のコメントライナーで柘植大教授の名越健郎さんはこう述べている。

「ウクライナ戦争の仲介外交が難航するトランプ米大統領が、ようやくプーチン・ロシア大統領に騙されていたことを察知し、対ロ強硬手段に着手した。ロシアのメドベージェフ安保会議副議長(前大統領)が米政府の対ロ制裁を「愚かな挑発であり、戦争準備だ」と非難すると、これに激怒したトランプ氏は8月1日、対抗措置として、米海軍の原子力潜水艦2隻をロシア近海に展開するよう命じた。

 トランプ氏がロシアに軍事的な実力措置を行使するのは初めて。トランプ氏はロシアが8月8日までに停戦に応じなければ、ロシアと取引する国に100%の関税を課すとしており、1月の就任以来続けた対口融和外交を放棄したかに見える。ただ、トランプ氏はロシアに弱みを握られているとの説もあり、どこまで本気で圧力外交を続けるかは不透明だ。現に15日に、両者はアラスカで会談をする

 一方のプーチン氏は「期待が高いほど失望も大きい」とトランプ氏の楽観主義を揶揄し、米側の圧力を無視する構えで、米ロ関係が一転して険悪化する可能性もある。」

一方、わが国の政局である。

8月8日の党大会では、石破首相は留任した。「令和の三木武夫」。驚異のねばり腰をみせる。本人が辞めると云い出さない限り、日本の首相を引きずり落とすのは至難の業である。

ついでに云えば、引きずり落とす側にも、今ひとつ「徳」のようなものが欠けている(以上、双日総研、吉崎達彦氏のご意見。私も同感)。

では、永遠に続くのか。これも吉崎さんから引用する。

「それでは少し見方を変えて、「過去にどういうときに自民党の総理・総裁は白旗を掲げてきたか」を思い出してみよう。直近の3代はこんな感じだった。

*2024年8月14日(岸田文雄首相)→裏金問題で引責し、総裁再任を求めないという「プランB」を発動。

*2021年9月3日(菅義偉首相)→総裁選への不出馬宣言。「二階幹事長斬り」で矢折れ刀尽きたか。

*2020年8月28日(安倍晋三首相)→コロナ下、健康状態の悪化で辞任の記者会見。

さらにもう少し前を振り返ると、こんな時期もあった。

*2008年9月1日(福田康夫首相)→解散総選挙を嫌って、「防災の日」に唐突な辞任宣言。

*2007年9月12日(安倍晋三首相)→体調悪化で突然の辞任。

*2006年9月26日(小泉純一郎首相)→総裁任期満了で悠々自適の引退。

○総理大臣が身を引くのは、見事に全部、8月中旬から9月下旬にかけてである。日本政治というのは、どうもこの時期に「ミシン目」のようなものがあって、総理が辞任するタイミングが集中している。

実際に8月上旬は広島、長崎と原爆投下の記念日があり、8月15日には終戦記念日がある。どんなに嫌われている首相でも、このタイミングに不在というわけにはいかん、という事情があるのだろう。「政治とは日程也」の典型みたいな感じである。

ということで、石破さんも10月までのどこかのタイミングで身を引くんだろうと思う。三木武夫は衆議院の任期満了まで粘りましたが。」

相場は高値水準のもみ合いだが、近くどちらかに離れよう

では皆さん,good luck!!


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