東証時価総額更新も個人投資家が売り越す理由
JPX400銘柄入れ替えの必勝作戦
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
時価総額更新は通過点 とにかく世界と歩調が合ってきた
ついに東証株式時価総額は1989年末の水準を更新し、過去最高を記録した。まあ米国株がほんのちょっとずつ史上最高値を更新、欧州株がすっ飛んでいく中で、遅ればせながら日本も時価総額最高を更新したことは喜んでよい。ただし1990年以降の新規公開銘柄の寄与度が大きいことは意識すべきだ。ソフトバンクもドコモもユニクロも楽天も存在していなかった。この分が追加されての話だから大幅に割り引く必要がある。
とにもかくにも投資家としては歓迎すべき話であるが、昨秋の安値からこの方225先物主導での割高株の一段高が原動力であり、形はあまりよろしくない。225の時価総額ベースのPERは16.0倍とさほどではないが、225インデックスのPERは19.6倍になっており、期待先行の感は否めない。
225インデックスPER19.6倍の一方、割安株も
いや、両者のギャップが大きいということは、見方を変えれば依然として割安株が多く残っているわけで、いまだにそういう株を売っている投資家が大勢いるという事実がある。投資主体別動向を見る限り、残念ながら個人投資家がそのメインということになる。なぜなら野田解散発言のあった12年11月3週の急騰以来、先週までの個人現物の売り越し額累計は、売りも売ったり21兆4153億円である。信用は4兆7894億円の買い越しだが、物凄い金額を売り越してきた。
高齢者が投資を引退or相続で売り
もちろん個人は押し目買い吹き値売りを励行する向きが多いから、正味の売り越し額はこの差額より少ない15兆円前後かなと思うが、それにしても大幅売り越しが現実だ。ズバリ言えば、年を取ってもう株から手を引かざるを得なくなったお年寄り、あるいは死んでしまったために相続された分の売却がその大半と思われる。
現時点で株式投資を続けている投資家に、間抜けな人はほとんどいないだろう(知識不足の人はいるかもしれないが)。新聞や投資雑誌を読んでいれば、現預金や不確かな不動産を抱えているよりは株の方が有利であることは十分承知している。よほど株が嫌いでなければ余裕資金はこれはいいぞと思う銘柄に突っ込んでいるはずで、株式のポジションは2年半前に比べて値上がり分以上に増えているはずである。
それでいてこれだけの売り越しになってしまうのだ。高齢化の圧力は恐ろしいほどである。死亡者数は昨年127万人、ならすと年率2.5~3%ずつ増加しており、今後も増える一方なのだ。だから今年も個人の売り越しは8~10兆円規模になるだろう。先週までの累計では現物売り越し3兆5853億円、信用買い越し4342億円。本来なら個人投資家協会みたいな存在が仲立ちをして有利な処置の方法をアドバイスしてやればよいと思うのだが、何分力不足でそこまで手が回らないのは残念だ。
JPX400入れ替え候補情報を入手
サポーターの方が筆者に最新情報を入れてくれた。岡三証券と大和証券のクオンツチームが分析したJPX400の入れ替え候補の情報である。実際の入れ替えは6月末の時価総額データと、社外取締役の導入などの企業運営に対するファクターの加算などが加味されるが、クロスセクション分析になると90%は信頼してよい。すでに3月末決算までのデータはほぼ完備した。
最近、岡三証券の勢いがよいのは承知している。ストラテジストの松本貴司氏はじめリサーチ関係の陣容もなかなかの水準になっており、ネットの岡三オンラインは対面営業併営の証券会社の中ではトップクラスの手数料・サービス体系となっている。大手4社、準大手8社と言われた準大手の中で独立を維持できたのは同社だけ。よく頑張りましたな。
両証券とも選んだ除外&採用33銘柄
肝心の銘柄だが、ルールでは現在の銘柄からランク440位以下になったら除外という非常に厳しい条件。除外銘柄の数だけ、新規採用される。除外銘柄の条件が会社によって違うところがポイントで、岡三の試算では除外36社、特筆されるのは4502武田薬品、7947エフピコが除外候補、一方大和では除外38社、8051山善、5020JXHDが6位以内の有力除外となっている。特別損益要因をどう判断するかで大きく評価が違っているが、それ以外は順位の変化があっても顔ぶれにほとんど変わりない。
上位36社で両方にダブッた除外銘柄は、コードで表記すると、8515、5631、2702、3774、5012、5214、5970、9766、6417、5019、2131、8508、4004、7245、8572、9936、8270、9086、5196、7242、4708、5471、9948、4045、6370、4114、9831、8566、2002、4634、7296、6674、7451。
その範囲で両社の分析でダブった採用候補は、8804、3569、2121、6770、5333、5406、8595、6807、6701、8473、8725、6756、5929、8050、8850、8279、1821、7846、3880、9044、8630、7287、8174、6995、4922、9678、1883、1802、6486、9101、5975、7951、7701。
9501東京電力は両社の採用候補に挙がっていたが、どう考えてもはじかれるでしょう。この辺の配慮をしないのがクオンツ分析の長所であり、短所でもある。
採用買い・除外空売りは確実、手じまいは素早く
あまりエレガントな戦法ではないが、採用候補から割高感の少ない20銘柄を買い、ど安値でない除外候補の20銘柄を空売りするという手法は、非常に高い確率で利益が得られる。インデックス運用に組み込まれた分の直接の需給要因のほかに、その流れに追随しようという連中の動きで増幅されるからだ。
ただし、この種の投資のおいしい場面は長続きしないので、いいぞと思ったら即手仕舞いの開始が望ましい。この作戦は毎年使える。また、この手法を使った動きが出る期間中は、JPX400連動運用は不利なので、TOPIX連動に移行することをお勧めする。
木村喜由のマーケット通信Vol.1298(2015年5月22日)
*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。
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