映画「ルーム」と目先急反発の週を予測 

公開日: : 最終更新日:2016/02/19 マーケットEye ,

*原稿は2月13日(土曜)の段階で今井澂さんからいただいていましたが、システムトラブルにより掲載が遅れましたことをお詫びします。

本年度アカデミー賞の主要4部門(作品賞、監督賞ほか)でノミネートされている秀作。試写会で観た。原作の「部屋」(エマ・ドナヒュー著)も読んで面白かった。

まだ19歳の娘が誘拐され7年間も監禁。男の子を出産する。その息子の5歳の誕生日から物語は始まる。ママを演じたブリー・ラーソンは、主演女優賞候補で息子ジャックのシェイコブ・トレンプレイが可愛くて巧いこと!ママは部屋からの脱出を計画するが、この部分は息もできないサスペンスフルなドラマ。

しかし、この映画はそこから始まる。

新しい「世界」を発見してどんどん適応してゆく子供に対し「戻らなければならなかった」母の心は狭くなってゆく。

円高株売りの超高速取引

この原稿を書いている2月12日深夜。TVは「1年4か月ぶり」の1万5000円割れを報じている。2か月半で21%も下落した。下げ方が2008年のリーマン・ショックに似ている。

今回は「リーマン」とか「サブプライム」といった明確な材料は見えない。やれ原油安、中国経済減速、米FRBの利上げ、イエレン発言による米国景気の前途への不安感。最近になってやっとドイツ銀行など欧州の金融不安が出てきた。

この間の円高へのヘッジファンドの仕掛けも株安に拍車をかけた。

1円の円高は日経平均で300~400円の下落。この円高株売りの注文が超高速取引でセットされる。取引高の40~50%がこのコンピューターによる1秒間2000回の売買注文だ。これに信用取引の期日による投げと、恐らくオイルマネーのファンドの換金売りが入り株安を加速化した。

目先の売りは終わった

1月29日の日銀のマイナス金利も円高つまり本来の円安と逆に作用した。この日から欧州の銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が急上昇した。日銀がやったのなら、ECBはマイナス金利を拡大するに違いないという読みからだ。

ドル安、もある。原油安は米国のエネルギー関連企業の前途に不安を生む。大手石油の業績悪。これにシェール関連の高利回り債利回り上昇により経営不安も見逃せない。

株安で書き忘れたが、上海株式の下落もある。10時30分に上海株の取引が始まり下げ始めると、上海は先物売りが出来ないので身代りに東京が売られる――という日も結構あった。

それでも、2月10,12日の大幅下げで目先セリングクライマックスは終わった。断言するには早いし、この下げを予告できなかったので私自身、曲り屋だが、伊達に80歳まで市場を見て来たわけじゃない。かなりの反発を予想する。

それでも、完全な大底とはまだ、とてもとても言えない。ドイツ銀行問題は、12日のコメルツ銀行の好決算で一応忘れられたらしいが、あのリーマンショックの時の株価を下回っている。まだ欧州の金融危機は現在進行中、である。

急反発の理由――売買金額、テクニカルに経験則

急反発が今週、あると考えた理由は次の通り。

  • 底値に必要な売買金額が多い。12日は4兆円の大台を超え、10日も3兆5000億円。国内勢は年金を含め一斉に買ったが、外国人売りが1兆円を超えたので受けとめられなかったと見ていい。しかし年初来の外人売りは6兆円を超え、換金は終わったと思う。。
  • アベクロ会談の後、黒田日銀総裁が詳しく内容を説明しなかったので引け際に売られた。しかし週末2日と来週早々に「何か」あるはずだ。
  • テクニカルに目先底値を示す指標が多い。日経平均の移動平均からのかい離率は東北大震災後のピークを越えたし、騰落レシオも記録的だ。信用取引の損失率22%も底値を暗示。また2月10日で信用取引期日は終了している。
  • 12日には今回の下落期間中で珍しく、三大メガバンクの株価が寄り付きの値より引け値が上がって終わった。反発が近いことを示す。経験則だ。

隠し通せなかったドイツ銀問題

それでも「大底だ。もう大丈夫」と言い切れないのは前述したドイツ銀行問題。私が匿名で昨年8月に「選択」9月号に書いた原稿をオマケにつけておく。誰もこの問題を言わないので、私の講演会では必ずこのコピーをつけて「世界の大きな不安材料」として申し上げてきた。NHKのニュースで、あるエコノミストが「突然に起きた」といったが、何たる不勉強。

問題はリーマンの時は公的資金で助けたが、今回欧州では「ベイル イン」つまり預金者に損失の負担を負わせること。私は9月のドイツ総選挙まで隠し通す、と読んでいたが。メルケル首相が退任し、新しい内閣が前任者のせいにして始末をつけるというストーリーが通じなくなってきたのだろう。だから、進行中。ただ、肝心のアメリカは2008年の時より金融市場は健全化しているし、日本はとっくに大丈夫。欧州のショックにとどまるだろう。

もうオマケを考えると紙数が尽きたが、来週は2年間ガマンして頂ければ最低2倍うまく行けばそれ以上になりそうな業種(もちろん銘柄も)申し上げます。お楽しみに。

映画のセリフから。

「部屋」からの脱出に成功。ママはジャックに「これからは何でもできるんだから」「なんで?」「自由になったからよ」。しかし5歳の男の子には理解できない。元の部屋のベッドに寝たい、とダダをこねる。時代は変わりつつあるのだが、まだはっきりと見えてきていない。それでも、日本は大丈夫。

映画「ルーム」と目先急反発の週を予測(第813回)

オマケとして、「選択」2015年9月号の私の原稿を。

名門「ドイツ銀行」のまさかの経営危機

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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