映画「ボーダーライン」とリスク・オンの開始
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最終更新日:2016/04/25
マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
映画「ボーダーライン」の原題は「シャリオ」で暗殺者を意味する。監督は「複製された男」のドウニ・ヴィルヌーヴ。注目の新鋭だ。
テーマは麻薬戦争。若い女性FBI捜査官のケイトの目を通して、この戦いの政治的・道義的な複雑性を生々しく描いている。
導入部がまずすごい。アリゾナの荒野の一軒家にケイトが部下を率いて突入すると、壁の中に何十人もの腐乱死体。すぐ近くの物置が捜査中に爆発、部下二人が死亡しケイトも負傷する。
FBIの上司からその日のうちにケイトは麻薬カルテルの壊滅と首領追跡の専門チームへの出向を要請され、「志願します」。リーダーとともにメキシコのファレス市に向かうが、元コロンビアの検察官がコンサルタントとして参加。次から次へと作戦にかかるが、不可解な展開にケイトは悩む。米国で一部の映画館で上映されていたが、評判がよく全米で。アカデミー賞3部門でノミネートされた。たしかに面白く、観てよかった。主人公ケイトを演じたエミリー・ブラントもかっこよかったし。
アベノミクスを見切ったブラックロック62銘柄
先週産油国SWFの売りについて書いたら、実は世界最大の資産運用会社ブラックロックのアベノミクス見切り売り、とか。本当ならば、参ったなあと思った。同社は2014年4月以降対日投資を本格化し、5%以上保有の大株主になっている銘柄は62ある。時価総額4兆7900億円。
CEOのローレス・フインク氏が「マイナス金利は銀行の収益に大きな打撃を与える」と3月下旬に発言、日本株への投資判断を引き下げた。
銀行株は三大メガバンク、あおぞら、ふくおか、横浜。証券は野村、大和。日経225での有力株だとファナック、BS、ニトリ、JR東日本、ホンダ、スズキ、日立、NEC-。まあ、やまほど、ある。
ただ、同社は日本株を割安と言っていたし、日経225のPBR1倍は1万5100円だから下値は知れている。売っているはずのファナック、メガバンクも日によっては5~6%も上げている。産油国のSWFと違ってブラックロックは手持ちの減らしだから、まあ量は知れている。
だから円高一服で、急に楽観的なムードが拡がっているのだろう。材料は原油高と円高のブレーキ。
もちろん、何といっても資産運用のリーダー格のブラックロックの(恐らく手持ちのごく一部だろうが)売り姿勢は、他の外国人投資家に影響力が大きい。
リスクオンへの転換
私はアベノミクスはこれから岩盤規制をブッこわして、1,2年するとアレレということになると確信している。目先は、あるヘッジファンドのマネジャーは「日銀の発言が変わった」として、リスク・オンで先物から買いに入っていると私に話した。意外なことが起きる、とも。
映画でケイトがバーで息抜きをした後、メキシコの警官と自分の部屋にいったらこれがカルテルの手下で、危うく殺されそうになる。今の市場はたしかに先週述べた通り、想定外のリスクは数多い。しかし当分株価は高いだろう。
先週も書いたが、捨てる神あれば拾う神ありで、新しい流れが見えて来た。
主要7通貨に対するドル先物買いが、昨年11月の市場空前の40万枚に達していたが、今やほとんどゼロ。このドル買いが減少する過程でドル安(円高)が演出されたのだが。そろそろ転機が近そう。円買いの限界とか、ドン詰まり、という表現がいいと思う。
原油に加えて鉄鉱石や銅まで上昇基調。リスク・オンへの転換はもう始まっていると確信する。
政策期待が大きな材料だ。となると建設株の一部の動意があるのは当然だし、個々の材料が出ると大きく反応する。だから勢いがいい。
注目の銘柄ーガン免疫治療薬、自動運転、リチウム電池
小野薬品(4528)のオプジーポの売り上げ予想の変更はサブプライズだった。2016年3月期の従来予想175億円の212億円への変更は、まあそうだろうな、だったが2017年3月期予想が何と1260億円!6倍だ。
抗悪性腫瘍剤だが、他のガンにも広く利用され、世界の市場は1兆円を超えるとの予想が、アメリカ側から出されている。新薬の利益率は途方もなく高いから、PERは割高と思わない。推奨ではないがどうぞご研究を。
次に。近く発表される前三月期決算はあまり良くないが、日本セラミック(6929)は自動運転用の超音波センサーで国内で90%、世界でも50%を占めるトップ。このセンサーは過去5年で市場規模は倍増し、2020年にはさらに倍。夢のある会社だ。
投資アイデアとしては、大和の木野内君が言っているリチウム電池の関連銘柄。電気自動車の急成長が材料。2018年からカリフォルニア州は厳しい排ガス規制をおこない、同業他社はたとえばテスラ・モーターから排出権を購入しなくてはならない。一方、ドイツではEV車に今年7月から5000ユーロの補助金を出す。日本も追随しよう。テスラの新しい「モデル3」3万5000ドルの予約注文が30万台を超えた。十分に研究に値するが、もうすこし「これだ!」というには私の勉強不足だ。
映画のセリフから。
コロンビア人の元検事の謎の男(ベニシオ・デル・トロ、好演)が主人公に言う。「よく、聞け。アメリカ人は私のやることがすべて疑いを持つだろう。だが最後に君にもすべてわかる」。私には何年か先の日経平均3万円以上の目標値達成で終わることが、はっきりと見える。
最後にお礼を。
私が入院したことをブログに書いたら、びっくりする位多くの方々からお見舞いと励ましのお言葉をいただきました。お礼申し上げます。もう本復し、従前と同じに活動しています。ただ8月に81歳ですから、十分に健康には注意します。皆様有難うございます。
映画「ボーダーライン」とリスク・オンの開始(第822回)2016・4・16
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
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