【初・中級者向き】私が待っていた二つの日経記事――これは実は大材料です。

 

2017.8.27

実は本日、私は82歳になりました。幸い元気で自前の歯は27本、週に3回は近くのプールにいって運動しています。やはりマーケットという捕捉しがたい怪物に日々取り組んでいますから、「流水不濁、忙人不老」なのかも知れません。

 

今回はいつもの書き方と違います。近着の映画を紹介し、そこから経済、市場に入り、シメは「映画のセリフから」。しかし実は妻が体調を壊してせっかくの試写会の招待状をずい分ムダにしました。妻がお医者さんに会うのに同行しなくてはならないし、私の顧問契約先には顔を出し、情報は人に会って取らなくてはならないし―。(ただ、妻はその後おかげさまで元気になりました。念のため)

 

なによりも私がこの秋、来年に来る激震の前兆としての予震があると予想していることが、この夏、書きにくくなっている最大の理由です。

 

そこに8月17日、日経が元日銀審議委員の中原伸之さんの「金融政策・財政出動の融合を」というインタビュー記事を出しました。かいつまんで述べると―。

「現在の4~6月期4・0%(年率)は長続きしない。景気循環のピークだ。」

「大局的にはグローバリゼィションの最終局面。この先、バブル崩壊などの非常事態が起きた場合、いまの金融政策の枠組みでは対処できない。日銀の国債保有残高は約500兆円、飽和点に達しつつある。」

――日銀は何をすべきか。(ここからが重要です)。

「来年、総裁が変わるタイミングで政府と新たなアコード(政策協定)を結ぶのがよい。財政出動と金融政策の融合が必要だ。日銀保有国債の一部、例えば50兆円を無利子の永久国債に転換すべきだ。

「償還の必要がなくなる分、政府が新たな建設国債を発行する余地ができる。政府が防災対策などに10年間で100兆円のインフラ投資をする。そのために期間60年の建設国債を発行して、日銀が市中で購入すればよい。

 

これです!

 

日本はバブル崩壊とデフレ、少子化老齢化の先進国です。しかし、プライマリーバランス目標という菅直人政権時に決められた「毒矢」(藤井聡内閣官房参与)で、予算の緊縮化が続いて物価目標2%と成長がなかなか、ままならない。これを打破するには、何か新しい政策がなければ、と思うのは私だけではないと思います。

 

日経は7月20日に「上がらぬ物価、日銀どう動く リフレ派三氏に聞く」の中で第一生命経済研究所永浜利広首席エコノミストの「日銀保有国債の永久債化も選択肢」という見解を紹介しています。要旨は中原さんと同じですが、「日銀と政府の新しいアコードを結ぶ」となんと政策協定の必要性まで同じ言葉で論じています。この二つの日経記事は、実は昨年までの「永久債否定」のトーンから百八十度転換しているものです。

 

実は永久債を望む提言は昨年までは、産経新聞田村秀男特別記者、バーナンキ前FRB議長、シムズ教授、アディア・ターナー前英国金融庁長官、それにジョージ・ソロス氏ぐらい。財務省お声がかりのエコノミストたちは全員反対でした。

 

私はその中で前衆議院議員・東京大学大学院客員教授の松田学さん独自の「財政再建を一挙に達成しつつ、10年間に100兆円の新規財政出動」というアィデアに注目しました。

 

松田さんは「赤字国債発行残高558兆円のうち300兆円を10年かけて消し去る。具体的には日銀保有国債が満期を迎える都度、永久国債に乗り換えてゆく」として―

2017年度44兆円、2018年度45兆円、2019年度33兆円…と計算。毎年度10兆円の財政支出増と30~40兆円の国債発行残高純減が同時達成可能。ただしこれは10年間に限る。と提案しています。

 

松田さんは日銀当座預金の準備率を変えたり、普通預金の性格の見直し、日銀当座預金への附利などなど。いろんな提案を行っています。また消費税を引き上げたい財務省対策には、社会保障及び教育のための「無期限バウチャー」を国民配布し景気の落ち込みを防ぐ一方、消費税増税で介護などの老齢化対策費とする一石二鳥のアイデアも。

 

私は景気対策のためだけでなく①防衛②教育③インフラ老朽化対策のためにも財投は必要と考えます。安倍首相はこのプランを含めて、新しい財源としての永久債を本気で検討してほしい。それが日本のためです。

なお、今週は田原総一朗さんが安倍首相に「政治生命を賭けて冒険をしてみないか」と勧めた政治的アクションの期限の8月末日が来ます。キーワードは北朝鮮、ミサイル、中国,さらに核兵器問題です。今週はスマホでニュースをよく見ておかれることをお勧めします。外国人投資家とくにヘッジファンドは大いに注目している材料です。

私が待っていた二つの日経記事――これは実は大材料です。 第873回

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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