映画「13デイズ」とコロナ危機と中国政変。そしてワクチンで2か月3倍の或る銘柄 2020・5・17 (第1012回)
1962年の「キューバ危機」を取扱った作品。そう書いてもご存じの方はもう少なくなったんだろうなあ。
当時は米ソ冷戦時代。1955年に革命を起こして、ソ連に接近していたキューバに、核ミサイルを配備しようと当時のフルシチョフ政権がたくらんだ。ミサイルを積んだ貨物船がすでにキューバにむかつて航行していた。
これを知ったJ・Fケネディ大統領は海上を封鎖し、ミサイルの配備は断固認められないと、強硬な交渉を行った。世界中が核戦争の危機におびえ、一時はフルシチョフが妻に、直ちにモスクワから脱出するよう電話したほどだった。
双方が妥協して決着。フルシチョフは当時キューバに輸送中だったソ連の貨物船を反転させ、危機は回避された。
キューバ上空で米空軍機がミサイル基地の建設を撮影し、ケネディ大統領が海上封鎖を宣言したのが1962年10月14日。米ソ合意が成立、危機回避が同月27日、映画はこの13日間を舞台にしている。
映画は主演ケビン・コスナー。補佐官オドンネルを演じ、ケネディ兄弟つまり大統領と司法長官のそっくりさん二人にも話題が集中。相当なヒット作になった。
今回はコロナ危機の最中に、以前からの世界的な懸念材料だった米中覇権闘争が(当然といえば当然だが)激化している。
キューバ危機は米ソ、今回は米中だが、世界全体のGDP成長率が4~6月期に前期比マイナス42%に落ち込むと予想されている。そこいらが冷戦時代と違う。
共通しているのはキューバ危機の時は核戦争。今回は新型コロナウイルスに、世界中がおびえている点である。
危機の最中に解決を予想するのはあまりにも無責任と言われそうだが、何かのご参考と思い、その後の展開を記しておこう。
世界的な世論の高まりが圧力になって、この危機は結局、部分的核実験停止条約(PTBT)の締結につながった。これがその後の核軍縮の始まりとなった。フルシチョフはその後対米譲歩の責任を問われ、失脚した。ケネディのほうはご存じのとうりのナゾの暗殺だったが。
現在はとてもそんな先のことは考えるのはムダ、と言われる向きもあろうが、しかし前週に私が書いたブログを思い起こしてほしい。私は最近の「倒習」運動が、広く党内外から信頼を集めている故鄧小平の子息の担ぎ出しにより、グンと強化されていることを報じた。この鄧僕方氏は76歳で、下半身が不自由。しかし上海閥や胡錦涛派にも友好的で、無欲な最高実力者と言われている。
以上はパルナソス・インベストメントの宮島秀直さんの情報だが、私は福島香織さんが伝えた3月28,29日に流れた噂の情報にも注目している。
「王岐山,旺洋、朱鎔基ら長老が手を組み,習の終身制は放棄、習の後任を李強,胡春華とし、秋の五中全会にこの二名が中央委員会入り、次の第20回党大会でそれぞれ総書記と首相に任命される。」
一方、米国側も対中圧迫を一段と強化する動きがある。4月30日「対中報復チーム」をホワイトハウス内に発足させた。すべての部門を含めたチームである。その後毎週木曜日に開催されている。
勿論トランプ大統領は強硬な対中政策を発言している。例えば中国に対する報復関税1兆ドル(現行の対中関税3700億ドルの2・7倍)をかけると、FOXテレビで発言した。これはクドロー氏など経済顧問が反対しているので、実現の確率は低い。(パルナソス・インベストメントの宮島秀直氏による)。
こんな大統領発言を聞けば、当然市場は動揺する。加えて予想されていたこととはいえ、経済指標や企業収益の悪化が続々と現実化。これではNYダウが弱い動きになるのは仕方ないことである。
加えてヘッジファンドの6月中間期末の解約45日ノーテイスが5月15日なので、やはり売り物勝ちになる。需給面の悪化がが、足を引っ張っているのだろう。
注目点をひとつ。NYが何百ドルも下げた翌日でも、日経平均はせいぜい弱含み程度。日銀のETF買いほとんどなしで、この状況だから日本の相場は強い。
もう一つ。安い日が多いNYで、2か月で三倍になった銘柄がある。材料から見て今後も有望と考えるので、ご紹介しよう。
会社名はモデルナ(MRNA)。マサチューセッツ州本社のバイオベンチャー。
新型コロナ肺炎へのワクチンで世界のトップを走っているとの情報を得たので、3月14日の私の講演会で、市場では1万5000円かそれ以下、という悲観論で充満しているが、日本株はすでに底値、来週思い切って買いを入れるべきであるという主張を行った。(これが正しかつたことは歴史が証明する。)又ワクチンが見つかっていないので、3年ぐらいかかるという悲観論に反論して、このモデルナを挙げ、買い。少なくとも注目すべきと申し上げた。当時株価は22ドル。先週末は66ドルだから2か月で三倍。しかも材料から見て上値はありそうなので、引き続いて注目したい。
つまり対コロナウイルスワクチン(MRNA―1273)は、フェーズ1で健康成人45名に接種。フェーズ2はFDA(米食品医薬品局)の了承を得て近く健康成人600人。フェーズ3は夏。注目されるのは、次の一点だ。
4月16日BARDA(米生物医学先端研究開発局)から最大520億円の助成金。続いてワクチンの製造設備のために、一兆円を政府が拠出するとの観方が、市場筋に流れた。十分にありうる。モデルナ社では2021年の生物製剤承認申請の準備に入った。
ワクチン開発が決まれば、景気回復のシナリオが確度を増す。トランプ大統領が感染防止よりも経済対策を優先している。このモデルナを含めて14ものワクチン開発が進行しているからに違いない。
映画のセリフから。大統領補佐官のオドンネル(ケビン・コスナー)が言う。「あしたもし太陽がのぼったら、人間の善なる意志のおかげだ。それが我々人間と悪魔を峻別するものなのだ」。
もうひとつ。ウオール街の格言を。「FEDには逆らうな。」これほどの金融緩和だ。結局はNYダウも上昇に転じる日は近い。現に失業統計がメチャクチャな日も500ドルの上昇だった。
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