映画「リオ・ブラボー」とようやく景気が底入れした米国、日本経済と株、それにポストコロナの成長銘柄 (第1015回)

西部劇で私の最も好きな映画の一つ。主役のジョン・ウエインに加えてデイーン・マーティンのアル中の助手、それに足の悪い老保安官補。この三人がとらえられている悪玉の弟を連邦裁判事が来るまで、街を包囲しているガンマン達に対し守り抜く。

 保安官事務所一か所にくぎ付けにされ、周囲は敵ばかり、わずかに若いカウボーイが参加したくらい。映画作りのコストは安い。それでも楽しいのはアンジー・ディキンソンのお色気と、何といってもディーン・マーティンの歌のシーン。ハワード・ホークス監督の最高の作品とわたくしは評価している。

これまで、コロナウイルスのおかげで、悪く言うと囚人のように家に閉じ込められていた人々が、ようやく動き出した。私はこのところ「三密」がいやで移動にタクシーを使うが、混雑がすごい。

運転手に聞くと、時差出勤とマイカーの組み合わせだとか、電車のほうもラッシュアワーには以前と同じと聞いた。

5月下旬から、2年とか4年とかの長期大不況説がまかり通っていたが、どうも間違っているんじゃないかと私は思っていた。

 株のほうもご存じ二番底説が主流。日経平均1万5000円、6月説がまかり通っていた。(三菱UFJ証券の宮田直彦さんはごくごく少数派)。

 大和証券の木野内栄治さんは実に鋭い指摘をしている。信用不安リスクを主要中銀が払拭したのが、株高の大きな要因、と言っている。

 たとえば独中銀のルフトハンザ航空救済。

 三月の世界的暴落は、コロナ対策による総需要のいわば切り捨て。これで企業収益の減退が発生。当然株価は下落する。さらに被害企業の経営困難=倒産という信用リスクが大幅下落の背景であった。

まずこのリスクがなくなった。前後して世界の中央銀行と政府は超金融緩和と巨大財政出動が実施された。まず、次に米国で、コロナ不況の底入れの兆しが発生。次第に好ましい経済指標が見えてきた。

そのシンボルが5月の米国の雇用統計。4月の2068万人減がプラス250万人。失業率も改善した。

日本は少し遅れてよくなっているのではないか。景気循環研究所長の嶋中雄二さんも「5月ごろが景気の谷か?」(月例報告5月19日付)と予測。今回も事後的に(いつも正確な嶋中さんの予測の通り)正しかったことがわかるだろう。

嶋中さんも指摘しているが、やはり自動車市場の回復が大きな寄与をしている。

SMBC日興証券の丸山義正さんが(私の執筆時点では未発表だが)5月の中国の市場の急回復ぶりをまとめている。(6月5日付)。

中国の自動車販売は2月が前月比マイナス84・3%。これに対し3月は持ち直しプラス258・6%、4月もプラス79.1%。

つづいて5月は前月比プラス14・1%、台数ベースでは2357万台と2018年6月の2400万台に迫った。

主要先進国(ユーロ主要4か国+米英日)の自動車販売は、3月前月比マイナス34・8%、4月にマイナス31・0%。ところが5月にはプラス40・6%。

丸山さんは「6月に想定されるさらなる持ち直しを加味すれば、4~6月期は増勢への転換が視野に入る」としている。

株高であまり注目されていないが、債券市場のほうで、ここ1か月、長期金利が上昇している。米国10年物国債は5月1日0・614%、これが6月5日に0・900%。要するに債券売りで、明らかに株式に資金はシフトしている。

これによりドル高、円安。円の対ドルレートは5月1日106・87。これが6月5日には109・ 56である。要するに売り方のストーリーつまり「円高と原油安による産油国オイルマネーの日本株売却」がブッこわれた。瞬間マイナス40ドルという先物価格のおかげで主要産油が減産協調。戻り高値を更新する始末。

売り方が頼りにしている基盤がみなガラガラと壊れているのだから、日本株のほうも私が口をスッパクなるくらい繰り返してきた「二番底なし、2万3000円まで真空地帯」が成就しそうだ」。いや、確実だ。

 NYのほうも同じ。だから雇用統計を材料に2万7000ドルが達成された。

 さて、ここからどんな投資作戦に出るか。

 日本のほうは、6月12日のSQがあるし、米国のほうはFDSの箱田啓一さんが予測する通り、9日近辺にちょっとした利食いにより下落があるだろう。買いに出遅れた向きは、押し目を狙う。私の3月14日の講演でいいところを買われた向きは、利食い千人力。

最後に銘柄を。先週に五G関連を挙げ、米国のモデルナ(MRNA)と合わせ9銘柄を注目した。今回は東証二部のファーマフーズ(2929)をオマケに。毛生え薬がヒットしているのに加え、国立癌研と超大型がん治療薬を開発中との情報を聞いた。オプジーボより大型、とか。

映画のセリフから。犯人を追う保安官と助手。犯人は悪党の根城である酒場に逃げ込む。保安官のジョン・ウエインの助手のデイーン・マーティンに言う「オレが正面から入るからお前はウラに回れ。」助手は答える。「オレはいつもウラから入っていた。たまには正面から入りたい」このシーンでマーテインは素晴らしい早撃ちを見せる。

今回のコロナ不況は、預金大好きな日本人に、真の資産形成に株式が必須なことを教える大チャンスだ。企業収益の期待を持たせながら足元ではジャブジャブの金融緩和。株高には願ってもない環境だ。これに、預金したら10月から手数料をとられる時代に入ったのだから。

しかも米中対立でたとえばファーウエイに取られても仕方がなかった自国市場を押さえることができる。流れに乗った企業は、大方の予想以上に急成長するに違いない。少なくとも今年と来年の秋までは、日本株は上昇基調。心配しないでGO!私は、強気です。

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