谷崎潤一郎「痴人の愛」と中国の将来第(1084回)

何回も映画化されているし、余りにも有名な作品だから、ストーリーは簡単に。

高級サラリーマンが、風俗業界(当時は「カフェ」と呼んだ)から十代の美少女ナオミを囲い、妻にする。

これが飛んでもない悪女だったのだが、主人公はますますのめり込む。この悪循環を谷崎潤一郎はこれでもか、これでもか、と書き込む。

物語は「ナオミは今年二十三で私は三十六になります」という一文で終る。谷崎流の「痴人」になることの喜こびを示しているシメだ。

今回は以前より考えていたテーマを取り上げることにした。それは「中国は再びアヘン戦争以前の圧倒的な政治、経済上の地位を取り戻せるか?」である。

人口の老齢化、少子化は日本が陥るより早く展開する。国連の調査ではすでに生産年齢人口の低下とともに、GDPの伸び率も2008年をピークに低下している。老齢化の進展は日本より早い。

ところが中国には日本のような町医者がいない。大病院だけ。

そこで医師は一人の患者に1分も満たない時間しか割いていない。年金もスタートしたばかりで全く不十分。

そこに習体制になって、「戦狼外交」を始めた。また自分も毛沢東、鄧小平に並ぶべく個人崇拝まで始めた。まるで皇帝制である。

米中の衝突は、こうして始まった。以前私は東京からNYに行くときにボストンのある企業のオーナーから、特許の侵害を平気でやっている中国の体制にカンカンに怒っていたことを思い出す。米国のビジネスマンで中国へ進出した企業はみな、巨大市場と安値の労働力に目がくらんで、このイカサマをガマンして来た。

これが、オバマ時代の甘い対中政策でいわばピークをつけ、トランプ、バイデンと「拒中」に変わり、その政策がきわめて高い支持率を獲得している理由だ。

以上、目新しいことは何もない。

問題は、この米国を中心とした「拒中」連盟が、有効なパンチをくり出しているかどうか。

私は中国の経済の成長を支えているのが「資本投資」で比重は44%。特に設備投資であり、その資金は半分が海外からの直接投資である。FDIと呼ばれる。

私は最近の数字を調べてもらった。大和証券の木野内栄治さんによる。

チャートをみて頂きたい。ひところ12兆ドル(2021年2月、年間ベース)が5月(最新)では3分の1、直前の4月には6分の1に減少した。兵糧攻めは効いているように見える。

過大評価は禁物かも知れない。これでも前年同月比27.5%増加だし、2019年の25%より高い。

ブラックロックは対中国で1000億ドルのファンドを立ち上げたし、ゴールドマン・サックスは在中の子会社の出資比率を100%にまで上昇させた。

こうした攻城戦の穴明けを除くと、以前から指摘されていた不動産バブルが、いよいよ終わりになって来ることの重大性は改めて認識されて来なければなるまい。

中国の社会融資総量(銀行貸出しプラスシャドーバンキングプラス株式発行)は47兆ドル。中国のGDP16兆ドルの3倍ある。

日本の過去のバブル期には30%~40%が不良資産。多めに(大概そうなる)だと18.8兆円。これが返済不能になる。

私は1990年代のバブル破裂期の銀行に在籍した。当時の日本より、今回の中国の方が始末が悪い。

理由は簡単。中国では土地は公有で地方政府が開発会社をつくり、そこに売却する形で資金を調達。建物関係は借り入れでまかなった。もちろんその何分の1かは関係者のフトコロに消えた。

この打ち出の小槌が、もう効かない。

では、いつごろ破局がくるのか。個人投資家協会の木村喜由さんは2026年、と読んでいる。理由? ムリな体制でもそれ位は持つからです。それ迄に、対中支出企業は撤収することをおすすめします。

やはりムリな体制は痴人の愛❓

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