基本の話by前田昌孝(第22回、金利と株価との関係)
日銀が10月31日の金融政策決定会合で、長期金利の1%超えの容認を決めました。日本の金利も本格的な上昇局面に入ると、株価への影響も大きそうです。金利の上昇は株価のプラス要因にもマイナス要因にもなりえます。両者の関係を改めて整理してみます。
<1%を超えるか、日本の長期金利>
長期金利は一般に残存期間10年の国債の利回りを指します。10月31日の金融政策決定会合では、1%の水準をこれまでの「上限」から「めど」に変えました。新たな上限は設けられていません。
そもそも日本の長期金利は2016年9月に日銀が導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策によって、一定幅の変動を容認しながらも、基本的にはゼロ%程度で推移するように、長期国債の買い入れによって誘導することになっています。
しかし、日銀が7月29日の金融政策決定会合で長期金利の0・5%超えを容認し、新たに国債の継続的な買い入れによって長期金利の上昇を食い止める水準を1・0%と設定したため、その後の長期金利は0・5%を超えてじわじわと上昇するようになりました。

10月31日の金融政策の修正を受け、10年国債利回りはこの日に一時0・955%と、2013年6月以来10年5カ月ぶりの高水準まで上昇しました。今後、日本の金利はじわじわと上昇し、早晩1%を超えるのではないかとの見方も強まっているようです。
米国では、米国債の価格が米国の失業率や消費者物価指数の動向に敏感に反応しています。失業率の低下は景気指標としては明るい話なのですが、インフレが収まらないのならば、米連邦準備理事会(FRB)は金融引き締め姿勢を堅持しそうだとの警戒感から、米長期金利が上昇しやすくなります。
株価はどうでしょうか。もし景気が悪いことを示す指標が相次いで公表されたとすると、債券利回りは低下するでしょうが、株価も下落するのではないでしょうか。株式の投資家が「景気後退が現実のものになりつつある」と受け止める可能性が大きいからです。
景気循環に伴ってどう金利や株価が動くかは定式化しにくいですが、極めて乱暴にいえば、向こう1~2年を見渡して景気が悪くなりそうなときは株価が下落し、長期金利も低下する(債券が買われる)傾向が強く、向こう1~2年を見渡して景気が良くなりそうなときは株価が上昇し、長期金利も上昇する(債券が売られる)とおおざっぱに考えてもいいかもしれません。
<理屈ではシーソーのように動く>
投資家の投資資金は一定だから、株式が上昇するときは債券が下落し、債券が上昇するときは株式が下落するのではないかと考えることもできます。実際、資産分散の理論は株式と債券の両方を適切な割合で保有すれば、一方がダメでも、もう一方で救われるのではないかとの期待感に基づいています。バランス型の投資信託も株式と債券の価格がシーソーのように動くことを前提にしています。
債券と株価との関係を占う指標にイールドスプレッド、あるいはイールドレシオというものがあります。イールドスプレッドは一般に長期金利(残存10年の国債利回り)から株式の益回り(PER=株価収益率=の逆数)を差し引いたものです。イールドレシオは長期金利を株式の益回りで割ったものです。

こうした指標は、市場価格はどこかに均衡水準があるはずだという考え方に基づいて作成されています。株式が割高ならば、株式が売られて債券は買われ、株式が割安ならば、債券が売られて株式が買われるのではないかというわけです。
<実際の値動きは複雑系>
でも「債券高・株安」あるいは「債券安・株高」は必ず約束されているわけではありません。米投信協会(ICI)が公表している米国のミューチュアルファンド(投資信託)の月々の資金流出入をみても、株式投信が売られて債券投信が買われている月や、債券投信が売られて株式投信が買われている月もありますが、これらと同じぐらい、両方とも買われたり、両方とも売られたりする月もあります。

株式か債券かという選択ではなく、投資家が価格変動リスクを積極的に取りたいと思っている局面(リスクオン)なのか、投資家が価格変動リスクを引き受けたくないと思っている局面(リスクオフ)なのかによって、投信への資金流出入が決まっているのかもしれません。
過去の米国の残存10年の国債の騰落とS&P500の騰落を比較した表を作成してみました。1985年以降の39年間の状況を振り返ると、債券相場と株式相場とが同じ方向に動いたのは22回、シーソーのように逆方向に動いたのは17回でした。

金利と株価の関係はおおざっぱに整理できるとしても、実際の値動きはさまざまですから、投資の実践にどこまで活用できるかは何とも言えません。それにしても難しい局面に入ってきました。(マーケットエッセンシャル主筆)
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